あいつは何といったか。今ではもう昔のことに思う。


友達だったヒトのはなし


おはよう、といわれた。
くもりのある高めのアルトが耳に届いて
おう。と返すと、お前はやっぱりくもった声で楽しそうに話すのだ。
今日はどこのこにするの?とか、あの家に珍しい犬がいたよ。とか。
他愛のないはなしをして、その日もテレビ番組をつくるために、カメラを担いで出かける。

犬と戯れていると、カメラが回っていることに気付く。
どうした?と聞いたら、君も人間だなぁって思ったから。と返された。
意外な答えに驚いて目を丸め、途端イヤな顔をして、一発叩いた。
お前は笑ったけど、俺はむしゃくしゃして、持っていたカメラをぶんだくった。
なにするの!と驚いたお前を犬の近くに立たせて、カメラを回した。
ほら、お前も撮ってやるから。そういえばお前は笑って、犬と戯れはじめた。
撮影は中止になったけれど、ちょっとした思い出をつくった。

その次の日お前は死んだけれど、次のお前はもう俺と遊んだことさえ忘れて、死んでしまったけど。
唯一残ったビデオテープは大切にして、お前が本当の意味で死ななくなった時に一緒に見たいと思った。

「ケニー・マコーミックに黙祷を。」

神父の言葉で俺は目を閉じる。
いつか、ケニーがしなないふつうのにんげんになりますように。
こころの中で何回目かになる望みを唱えた。

「またな、ケニー」

声は蒼い空に溶けて消えていった。

(このこえはきちんとおまえのもとにとどいたか、)


20080410
シーズン8エピソード11で一緒に居たからありかと思って。