悔しくて泣いた、心の中で、そっと。
(ごめん、だって俺はそんなキャラじゃぁないから)

『君ヲ想フ』

家族のいない、独りきりの家に電話がなった。
音の矛先は俺だ、ああ、分かってるよ。
ぶっきらぼうに、騒がしい受話器をとった。

「はい、」

ファミリーネームを言う前に『クレイグ?!』と回線の向こうから、あのこの声。

「なんだ、カイルか?」
『そうだよ!それより…』

ぷつん、と何かが切れた。
思考回路も五感も、切断されたケーブルみたいに。
受話器の向こうからかすかに、カイルが俺の名前を何度も呼んでいたけれど、
それさえも遠い昔に聞いた音のように感じた。
ガチャンと勢いよく受話器を押し付ける。
きっとカイルは驚いただろう。
そう頭で考えるよりもはやく足が動いた。

全速力で走ると帽子のみみあての部分が邪魔で、仕方ないから手に持って走った。
速度は一向に緩めない。
地獄直行病院に着くと、エレベーターのボタンを連打した。
息は切れて、苦しい。肩で息をしても辛いくらいだ。
なかなか来ないそれに痺れを切らして、隣の階段を全速力で5階まで上った。
廊下を迷惑にならない程度に早歩きで歩く。
今なら競歩の選手にだって勝てそうだ。
廊下突き当たりから3番目の病室、勢いよくドアを開け叫ぶ。
マナー違反と分かっていても、叫ばずにはいられなかった。

「ケニー!」

握った帽子が千切れそうになるくらい、強く、手を握り締めた。
(うそ。)
白すぎる病室に、目がかすんだ。
クリアにならない視界の果てで、俺はそこに、泣き崩れたあのこの友人を見た。

ああ、そうか。
さよなら、大好きだったケニー。


(死んでもなお君を想うよ。)


20080412 ケニ+クレ

s05e13の話後。
ケニーのお見舞いには誰々いったんですかね?